第47章 自分の心地よさが一番

「よかった、本当によかった……」

祖母の声が安堵に震え、受話器の向こうで繰り返し呟く。

「辛かったらいつでも帰っておいで。婆ちゃんが美味しいもん作って待ってるからね。金持ちの家だからって気兼ねすることはないよ。凛が心安らかに暮らせるのが一番なんだから……」

受話器越しに伝わるその声には、故郷の訛りと深い愛情が滲んでいる。橘凛はただ静かに、その温かな響きに耳を傾けていた。不快感など微塵もない。

この老婆は、彼女の実の祖母ではない。

かつて橘宗一郎が、厄介払いした赤ん坊の世話をさせるために適当に雇った、ただの田舎の未亡人だ。

だが、その老人は慈悲深く、血の繋がりなどないこの子供に、あ...

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